AI_ML_DL’s diary

人工知能、機械学習、ディープラーニングの日記

知能検査

知能検査

ヒトの知能を定義するのは難しかろう。人工知能が定義できないのは当然のことだ。

ヒトの知能検査というものがある。だったら、人工知能も、それにならって評価すればいいではないか。

ということで、人工知能を評価する方法を考えるために、ヒトの知能検査について学んでみよう。まずは、ウイキペディアから。

 

知能検査の入手に関しては、日本心理検査協会倫理要綱で心理検査の散逸が規制されているため、一般的な知能検査の本体は、医療・教育関係者や、企業の人事担当者などの特定の相手のみに販売しているとのこと。

 

開発の歴史

1905年:アルフレッド・ビネーとテオドール・シモンによって「知能測定尺度」が作成された。全員入学の学校制度が普及するにつれ、先天的に学力などで同年齢児に追いつけない児童の存在が問題になった。この検査は、発達が遅れているか否かを知るものだった。

以下、年表省略

 

利用の歴史

過度な優生政策、人種政策などに悪用された歴史もあるが、学校や企業など多くの場で活用されてきた歴史もあり、学習指導や障害者福祉に貢献した側面も大きい。しかし、人間の内的な部分を直接測るというデリケートなものであるため、欠点を非難されたことも多い。

1947年に日本で、高等教育の学校の入学試験で知能検査が開始されたが、1954年に廃止された。

1971年に、アメリカの連邦最高裁判所が、ほとんどの業種の入社試験での知能検査を禁止する判決を出した。

 

知能検査に対する批判

知能は人間の脳の働きの一部でしかなく、新しい者を生み出す創造力、他人と協調できる社会性、芸術的なセンスなどは含まれない。

知能検査は人間の持つ才能のごく一部を測っているにすぎない。

 

以上で、超簡単な、ウイキペディアからの情報の切り抜きを終了する。

 

Google Scholarで、「知能検査」のキーワードで検索したところ、知能検査の具体的な内容が書かれた文献は殆どなかった。次の論文の主題はタイトルにあるように、知能検査の開発の歴史をまとめたものであるが。知能テストの概要が縮小サイズで掲載されていたので、それを参考にさせていただくことにする。 

立命館人間科学研究 第6号 2003.11

田中ビネー知能検査開発の歴史
中村 淳子1)・大川 一郎2)
History of the development of the Tanaka-Binet Intelligence Scale.

この論文に、ビネーの1905年版の30項目にわたる問題の概要が紹介されている。

おおよそ、ヒトの成長段階の順になっているようである。

1908年には、30項目に合わせるように、3歳から15歳までと成人の枠が設けられ、1911年には、年齢別の枠の内容が改訂されている。3歳の枠は7項目目から始まっており、成人の枠は28項目から始まっている。

以下に30項目を列挙する。各項目は平均して80文字くらいで記述されている。

1.凝視:物を見る行動に伴う頭と目の動作に協応があるか否かを調べる(火のついたマッチを子どもの目前で動かし追視するかどうか)。

2.触覚の興奮によって引き起こされる把握動作:手の触知覚とつかんだり口に持っていく動作との協応を調べる(例えば、棒を子どもの手に触れさせて、それをつかんだり、口に持っていくかどうか)。

3.視覚刺激によって引き起こされる把握動作:物を見ることとつかむことの間に協応があるかを調べる(子どもが手の届く範囲に置かれた物をつかんだり、口に持っていくかどうか)。

4.食物の認識:視覚によって食べられる物と食べられない物を弁別する(チョコレートとよく似た木製立方体を提示し、反応を調べる)。

5.障壁によって困難にされた食べ物の探索:簡単な記憶力と意志的努力との協応が調べられる(チョコレートを子どもの目の前で紙にくるみ提示する)。

6.簡単な命令の実行と単純な動作の模倣:動作および動作の意味理解など、さまざまな協応と連合が要求される(命令に従って座ったり、物を拾い上げる等。検査者の動作を見て、手をたたいたりする等)。

7.事物についての言語的知識:事物とその名前とが連合しているかを調べる(頭、髪、目、足、手、鼻、耳、口など身体の部分を指示。ひも、コップ、鍵など身近な物の指示・・・「ひもをください」)。

8.言語による絵の認識:絵の中の事物と名前とが連合しているかを調べる(絵の中の物を指示・・・「窓はどこ?」)。

9.指示された物の命名:前問と同様であるが、方法は逆になる(「これは何ですか?」と検査官が示した絵の名前を言わせる)。

10.長さが異なる2線の直接比較:知覚した1線と別のもう1線を比較し、相違を見つけ出す精神活動が要求される(4㎝と3㎝の2線が描かれている3枚の図を見て、長いほうを指示)。

11.3数詞の反唱:直接記憶と意図的注意を調べる(連続しない数詞・・・3-0-8を復唱する)。

12.2つの重さの比較:注意力、比較力、筋感覚が要求される(3gと12g、6gと15g、3gと15gなど重さは異なるが同じ大きさの立方体2個のうち重たい方を選択)。

13.被暗示性:判断力と性格の抵抗との葛藤を探る(①ひも、コップ、鍵を提示して、「ボタンをください」と存在しない物を要求。②絵の中の事物を指示させて、最後に無意味語である「パタプム(patapoumu)、ニチェボ(nitchevo)はどこ?」と問う。➂長さが違う2線の比較の後で、等しい長さの線を示して「どちらが長い?」と問う)。

14.既知の物の言語的定義:語彙といくらかの一般概念が要求され、簡単な自分の考えを表現できるかが調べられる(家、馬、ママとは何かを問う)。

15.15の単語で構成されている文章を反唱:言葉の記憶、直接記憶であり、言語活動および意図的注意力が求められる(「私は、朝起き、昼に昼寝をし、夜に寝ます」などの文章を1回だけ聞かせ、復唱させる)。

16.想起による既知の物の比較:概念作用と相違を考える能力および観察力が要求される(紙とボール紙、蝶と蠅、板とガラスなどの2つの物の差異を問う)。

17.絵についての記憶問題:注意力と視覚的記憶力が要求される(13枚の絵「鐘、鍵、釘、乗合馬車、樽、ベッド、さくらんば、バラ、口、鼻、子どもの頭、卵、風景」を次々に30秒ほど提示し、後にこれらの名前を想起して言わせる)。

18.記憶による図形の描写:注意力、視覚的記憶力および多少の分析力が要求される(2つの図形を10秒間見せ、再生させる)。

19.数字の即時反唱:直接記憶と即時的注意力が要求される(11問と同様であるが、誤りが重要な意味を持つ・・・判断力の欠如など)。

20.想起による既知の物の類似性:注意力、類似の観念および観察力が要求される(ひなげしと血、蟻と蠅と蝶と蚤、新聞とカードと絵などの似ている点を問う)。

21.長さの比較:敏速な比較による判断力が要求される(2本の対「一方は30㎜、もう一方は31~35㎜;15対、一方は100㎜と101~103㎜;12対」を比較し長い線を指示する)。

22.5個の重りの配列:注意の持続的方向づけ、重量の弁別、判断の記憶などが要求される(色、形、大きさともに等しいが重さの異なる5個の重り「3g、5g、9g、12g、15g」を重い順に左から並べる)。

23.おもり除去後の推理:22問とほぼ同じであるが、加えて推理力、記憶力が要求される(22問が正しくできたら、すぐに子どもの目を閉じさせておもりの1個を取り去り、どれがなくなったか指摘させる)。

24.単語の韻合わせ:語彙の豊富さ、柔軟性、知的活動の自発性が要求される(従順「obeissance」と同じ韻の単語を1分間でできるだけたくさん言う)。 注)論文では従順ではなく服従となっている

25.文中の空所穴埋め:記憶力や文章力、判断力などが要求される(文末が欠けている文章を読み上げ、問いかける調子で声を中断させ、子どもに続きを言わせる)。

26.3つの単語による1つの文章作成:自発性、創意、流暢性、作文力などが要求される(パリ、川、運命(財産)の3つの単語を用いて1つの文章を完成させる)。

27.抽象的質問への解答:抽象的な理解が要求される(文章の初めの部分だけを読み、「どうしたらよいか?」と数回たずねる。例:非常に重大なことを決める前に何をしなければなりませんか?など25問)。

28.時計の針の逆転:推理、注意力、視覚的想像力が要求される(6時20分と3時4分前の2つの時刻について長針と短針を逆にしたときの時刻を想像によって言わせる)。

29.切り抜き問題:意図的注意力、推理力、視覚的想像力が要求される(子供の前で紙を四つ折りにする。折り目が1つとなる辺を三角形に切り抜き、それを広げたときどうなっているかを描かせる)。

30.抽象語の定義:語彙、抽象的思考が要求される(2つの抽象語「尊敬と友情、退屈と苦悩」の相違点を言わせる)。

 

これは、非常に興味深いものである。

各項目の内容は、知能とは何か、ロボットや人工知能は何をなすべきか、何ができるか、ロボットや人工知能の性能を評価する「ものさし」を考えるうえで、示唆に富むものである。

この30問は、ヒトの知能の発達の過程があらわれているためか、ロボットや人工知能の性能が向上していく過程を見ているような気がする。

人工知能の設計においては、このヒトの知能をはかる作業は非常に参考になるように思う。しかしながら、人工知能がこれから達成しようとしているモノとは別物であろう。

画像認識、音声認識自然言語処理など、人工知能の守備範囲は広がってきただけでなく、日々、進化し、高度化している。

画像認識は、CNNの登場により、飛躍的に進んだだけでなく、何がどこに存在するのかをリアルタイムで追跡することもできるようになっている。ある壁を超えると、一気に進むところが、ヒトとは違うように思う。

音声認識においては、ヒトの声を聴きとれるだけでなく、発声もでき、流ちょうに発話することもできる。複数の音が混ざっていても聞き分けられ、楽器Aと楽器Bを入れ替えて演奏できるようにもなっている(筈)。マンガのコナンがやっているような音声変換も容易にできる(筈)。医療画像では、専門家と同レベルの診断も可能になりつつある。

画像生成、音楽の生成(作曲)、文章の作成などもできるようになっており、日々進化している。

自然科学の分野では、コンピュータ資源と時間を要していた第一原理計算なども、ゲームパソコンで容易にできるようになり、タンパク質の構造予測分野においても新たな可能性を示しつつある。

各分野の専門家の域に達しているとはいえないが、人工知能に求められるのは、子どもの知能でも一般人の知能でもなく、専門家の知能であり、専門家の知能すら超えた知能レベルである。

それゆえ、成長する人工知能の性能をはかるには、最低でも専門家の知能をはかるものさしが必要なのである。

さて、専門家の知能とはなんぞや。

 

答えは、The Measure of Intelligenceにあり!

 

おわり

 

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