AI_ML_DL’s diary

人工知能、機械学習、ディープラーニングの日記

物理化学(燃料電池を意識して):2021年9月29日~中断

ムーアの物理化学:藤代亮一訳 を眺めている。

17章 液体状態

3節 液体のX線回折

液体のX線回折について説明されている。液体水銀のX線回折図形と、その回折図形を解析することによって得られた動径分布関数g(r)が図示されている。

4節 液体構造の研究結果

液体構造の研究結果として水のX線回折が紹介されている。J. MorganとB. E. WarrenがJournal of Chemical Physics, 6, 666 (1938)に発表したものである。それによると第一隣接距離は、1.5℃で2.88Å、83℃では3.00Åより少し大きいところまで変化する。

(原子間力顕微鏡で固体表面の水の水和層を検出した画像を初めて見たときは驚いたものだが、X線回折でも水和層を検出できるかもしれない。と思って調べてみたら、X線回折X線CTR)による測定結果が2004年に報告されている。あらためて原子間力顕微鏡と表面X線CTRを比較すると、後者は測定精度が高く(観測している分子数は10^12~15レベル)、前者は局所情報(観測している分子数は10^2~3レベル)がわかるという違いがある。AFMの測定精度の向上が望まれるところである。とはいえ、第一原理計算や分子動力学(第一原理計算を含む)による計算精度が上がっており、かつ、機械学習の導入によって計算時間も短縮されているので、測定精度を追及することの意味について考える必要があるように思われる。とはいえ、やはり、科学することの根本は観測することにあるので、さらなる空間分解能の向上とノイズの低減が進むことによる新たな発見に期待したいと思う。タンパク質の水和構造についてもX線回折による重要な研究があるが、計算でどこまで明らかになっているのだろうか。ちょっと調べてみた。分子動力学によるシミュレーションは不可欠であるが、計測においても、X線テラヘルツ、NMRなど種々の計測技術を駆使しているようである。シミュレーション技術が進むとスペクトルの小さな差異についても解析可能になり、計算と計測の相乗効果でさらに前進しているように見える。現在活発に研究されている領域のようである。)

11章 原子構造と放射能

7節 放射能

マリ・キュリーがピエール・キュリーの論文集の序文に書いた文章が紹介されている。その一部を以下に示す。

ピエール・キュリーにとって、科学は必要欠くべからざるものであり、かれは科学こそ純粋かつ高尚なものと考えていた。経歴とか成功とか名誉とか栄光とかいうような、仕事に無関係なものはなんでもかれの考えに混ざり込んでくることを承知しなかった。かれは一つの問題を考え、時間と労力を惜しまずその解を追求し、少しずつそれを孵化し、ついで精密に育てあげ、最後に正確な結果の仕事に実らせて問題を実際に進めて行くことで一杯だったのである。かれはたえず広い範囲の科学的考えで頭が占められていたけれども、どの仕事をするに当っても同じように良心的な注意をし、どんな実際的なことがらも努力するに値しないとは考えなかったし、また結果の華麗さや生ずる影響を目的とはしなかった。

(科学的知識の不足あるいは欠如は科学的検討や考察が不十分になる原因であり、研究を推進することを妨げる要因となっているが、たいていは、不十分なままで放置されている。物理化学の教科書を前にすると、自分の知識がどれくらい不十分であるかがよくわかる。今、十分に理解できていることなどほとんどないことに気付かされて落ち込んでいる。少しずつ、知識を増やし、理解できる範囲を拡げていこう。)

1章 物理化学的な系の記述

実験とは物理的世界の計画的な観測である。

理論とは観測されるものを理想的なものに関係づけようとすることである。

この宇宙の究極の性質についての研究を掘り下げてゆくと、”説明”とか”理解”といったことばに付随する意味が次第に変わってくる。もともとこれらのことばは奇妙なことをありふれたことで表現しようとすることであるが、現在のところ科学的説明は比較的耳慣れたことを目新しいことばで記述しようとする傾向の方が強い。たとえば光を光子で、物質を波動で、といった具合である。それでも、理解しようと努める際には、理論の数学的背後に、過程の”物理的な像を描いてみる”ことは重要であると考えられる。

6節 物質の熱的性質

純粋の気体または液体状態を規定するためには、まず物質の質量mを規定すればよい。それからさらに三つの変数があるが、そのうち任意の二つが規定されればよい。これらの三つの変数は圧力P、容積V、および温度θであり、このうち任意の二つを指定すると第三の変数は規定される。これら変数の間には互いに関係があるからである。

温度θを物理的量として用いる前に、温度が定量的にどのようにして測定されるかを考える必要がある。温度という概念は暑さ、寒さの感覚から発展したものである。これらの知覚は液体の容積変化をもとにした温度計(thermometer)の読みに関連づけられることがわかったのである。

1631年にフランスの医者 Jean Rey は患者の熱病の進行を調べるためガラス球とガラス管の一部に水を入れたものを用いた。・・・。2個の定点を用いて目盛をつけることは、1688年 Dalenceによって行われた。かれは雪の融点を-10°、バターの融点を+10°と選んだのである。1694年、Renaldiは上の方の定点として水の沸点を下の定点として氷の融点をとった。これらの定点を正確に規定するためには、圧力は1気圧に保たれ氷と平衡にある水は空気で飽和しているという条件をつけ加えねばならない。これら2点へ0°と100°という数値を与えることを初めて提案したのは1710年スウエーデン人の Elviusであった。この2つの温度は百分度の目盛を定義するもので、同じような系を用いたスウエーデンの天文学者の名をとって公式には Cellcius(摂氏)温度目盛りと呼ばれる。

(温度の話題になると、最初に思うのは絶対零度-273.15℃であり、Heike Kamerlingh Onnesが発見した超電導現象である。Wikipediaによると、「1882年、ライデン大学実験物理学教授に就任。1894年、酸素、窒素、空気の液化装置を備えた低温物理学研究所を同大学に設立した。1908年、ヘリウムの液化に初めて成功。カール・フォン・リンデらが開発した冷却機と3重構造の魔法瓶を用い、外側から順に液体空気、液体水素を入れて温度を下げ、最終段階はジュール=トムソン効果によって0.9Kという低温を達成し、ヘリウムの液化を実現した。これが、当時の世界一の低温となった。オリジナルの装置はライデンの Boerhaave Museum にある。1911年に純金属(水銀、スズ、鉛)を冷却し、超低温での電気的性質の分析を行った。ウィリアム・トムソン(ケルビン卿)らは、絶対零度では電気伝導体の電子が流れなくなる、つまり金属の比抵抗が無限大になると信じていた。一方オネスらは温度が低くなるに従って電気抵抗が小さくなり、絶対零度では0になると考えていた。これはイギリスのマーティセン (en) が温度が低くなると金属の伝導率が高まり、抵抗値が小さくなると示したことに基づいている[1]。4.2Kで、水銀の電気抵抗が突然消滅した。当初オネスは試料の電極がショートしたと思ったが、その後で現実に電気抵抗がゼロになったのだと気づいた[2]。これが超伝導現象を発見した瞬間だった。オネスは「水銀は新たな状態へと遷移した。この状態の特異な電気的特性から、これを超伝導状態 (superconductive state) とでも呼ぼう」と記している。その後、スズ、鉛などでも超伝導現象が起こることを発見した。また、超伝導状態の物質に磁場を加えると、超伝導が消失することを発見した。なお、オネスは元々 "superconductivity" ではなく "supraconductivity" という語を使っていた。低温物理学への貢献により、1912年にランフォード・メダル、1913年にはノーベル物理学賞が授与された。」273.15℃は絶対零度と呼ばれているがどのような状態なのか。と思っていたら、教科書に書かれていることがわかった。)

6章 熱力学と化学平衡

13節 絶対零度への接近

低温をつくり出したり用いたりする科学を低温科学(crypgenics)とよぶ。絶対零度に数度以内といった温度で初めてある著しい物質の性質が現われてくる。すなわち、金属の超電導とか超流体ヘリウムへの転移などがそうである。Tが0°Kに近づく際の物質のエントロピー極限値は(6・22)式の定数S0(下付き0)である。まず極低温を実現するのに用いられる方法を考察し、それからこの温度領域でエントロピーがどうなるか調べてみよう。・・・。

(ジュール・トムソン効果とLinde法により、0.84°Kに到達した。さらに温度を下げるためには、断熱消磁法(adiabatic demagnetization method)が必要であった。断熱消磁法は、1926年にWilliam GiauqueとPeter Debyeによって独立に提案されたとのこと。)

(今読むと、この教科書は、非常に良く書かれていて、示唆に富み、刺激に満ち溢れているように思うのだが、当時の自分は、おそらく、無感動で試験勉強のために目を通していただけだったのだろうと思ってしまう。試験勉強=短時間に試験に出る事項のみ記憶しようとしていた。言い訳に過ぎないが、時間はあっても、わからないところを調べる手段が限られ、図書館で調べ物をすると非常に長い時間がかかった。文献検索するのがたいへんだったし、文献が見つかってもコピーが制限されていた。そんなこと言うと、コピー機すらなかった時代の学生に笑われるかな。)

(10月1日から、仕事に復帰する。半年か1年ごとの契約なので、いつまで続けられるかわからないし、どのような仕事が待っているのかもまだわからないが、研究者を志していた頃の自分を取り戻して、研鑽を積んで、良い仕事をしたいなと思っている。)

8章 化学反応速度論

1節 化学変化の速度

最初の明確な定量的研究は1850年にL. Wilhelmyによってなされた。かれは酸の水溶液中におけるショ糖の転化について、偏光計を用いて研究した。

H2O + C12H22O11(ショ糖) → C6H12O6(ブドウ糖) + C6H12O6(果糖)

(酸が反応式に現れない:酸はそれ自身消費されずに反応速度を増大する触媒として作用する)

2節 反応速度の測定法

・・・。したがって最良の分析法は、事実上連続的で、しかも反応混合物から次々と試料を取り出さなくてよい方法である。それにはそれぞれの場合に応じた物理的性質が利用される。Wilhelmyが用いた旋光能の測定は一つの適切な例である。他の物理的方法として次のようなものがある。

1) 吸収スペクトルおよび比色分析

2) 誘電率の測定

3) 屈折率の測定

4) 反応による容積変化を測定する膨張計(dilatometer)法

(化学反応をリアルタイムで追跡している。in sutu, operandですな。)

3節 反応の次数

反応の次数は速度式における濃度のべき乗の和として定義される。たとえば、五酸化窒素の分解、2N2O5 ---> 4NO2 + O2は速度式 -d[N2O5]/dt = k1[N2O5]に従うことがわかっているから、これは1次反応(first-order reaction)である。二酸化窒素の分解、2NO2 ---> 2NO + O2は式 -d[NO2]/dt = k2[NO2]^2に従う。これは2次反応(second-order reaction)である。・・・。化学量論的な反応式の形と反応次数との間には必然的な関係は無い。

4節 反応の分子数

10章 電池

22節 濃淡分極

電池が不可逆的な条件のもとで働く際そのemfは当然平衡値からずれたものになる。電池が蓄電池すなわち電源として用いられる場合、電圧は平衡値以下に降下する。また電池内で電解を起こす場合に加えられるべき電圧はこの電池の平衡値以上のものでなければならない。

この電圧の平衡値との差は一部電池内の抵抗に打ち勝つためにも必要であって、これは積 IR に等しくなる。したがって電気エネルギーRI^2が熱として散逸する。これは不可逆的力学過程における摩擦損失に類似のものである。

このほか、電圧の差を生ずる原因はなお二つのものが普通考えられる。その一つは電池の電解質に起因するものであり、他の一つは電極における速度過程に関連するものである。前者は濃淡分極(concentration polarization)、後者は過電圧(over potential)とよばれる。

濃淡分極とは、その名称が示すように、働いている電池の電解質中に現れる濃度勾配によって生ずる。たとえば、銅陽極と白金陰極を硫酸銅溶液に浸した電極を考えよう。この電池に電流が流れると銅は陽極から溶出し陰極に析出する。電流がいくらか流れると電極付近の溶液中にはいくぶん銅イオンが減少することになり、電池内に濃度勾配ができる。このような濃度勾配ができれば10章16節で議論した濃淡電池と同じことになり、この濃淡電池が外部からの電圧に対抗する逆emfを与えるものと考えられる。この種の濃淡分極は、電解質をはげしくかきまぜて電解質によってつくられる濃度勾配をなくしてやれば実際に除去できることが多い。また温度を上昇させて電池内の電解質イオンの拡散を促進してもこの分極を減少させることができる。

(ここまでは定性的説明であり、文章を読めば分かったような気になるが、電池を組み上げて性能を出すためには定量的な取り扱いができるようにしておく必要がある。そのためには、9章の電気化学:電気伝導度とイオン反応、の知識が必要になる。濃淡電池の電位差であればFickの法則、・・・。)

23節 過電圧

過電圧(overvoltage)の現象の原因は、電極における平衡の達成の遅いこと、すなわち、電極と溶液内イオンとの電子の授受のいずれかが遅いことにある。すなわち反応が進行するには活性化自由エネルギーが必要で、外部から加えた余分の電圧がこの自由エネルギーを供給するのである。この現象はたいていの電極反応に見られるが、金属電極で金属の析出または熔解が起こる場合は通常小さいものである。特に気体の水素または酸素を発生させる場合に必要な過電圧はきわめて大きく、1V、またはある金属ではそれ以上にも達することがある。

 

***毎日、継続する予定***

***時間のある時に、ほんの少しずつ***

 

10月16日(土)

14章 分子構造と分子スペクトル

14節 核磁気共鳴

核スピン I をもつ核を磁場におけば空間量子化が起こる。すなわち磁場のまわりを磁気モーメントベクトルが歳差運動をして、磁場の方向の成分は次の値しかとることはできない。µ mngnβn ここでmn = I, I-1, I-2, …-I である。磁場におくと、異なったmnの値の状態が少しづつ異なったエネルギーをもつことになる。

・・・・・・・・・・。

この振動数は磁場の方向のまわりの磁気モーメントの古典的 Larmor の歳差運動のものと同じである。磁場においた種々の核スピン成分のエネルギー準位間の遷移を検出しようとした初期の試みは不成功に終わったが、1946年 E. M. Purcell と Felix Bloch は独立に核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance, NMR)の方法を発展させた。

(テキストには、l = 4 の場合の空間量子化の模式図と、基本的な核磁気共鳴実験に用いる簡単な装置の模式図が描かれている。ここに書いている断片的な文字情報からでは、とても理解できるものではないと思う。)

磁石の磁場 H0 は0から10000 gaussまで変えられる。この磁場は空間量子化の結果、核エネルギー準位の等間隔の分離を引き起こす。そこへたとえば60 Mcの低出力のラジオ波を送信器から発信させる。すると小さな振動磁場ができて試料に作用する。この振動磁場の振動数が2準位間の遷移の振動数に等しいときには、共鳴してエネルギー準位間の遷移を生ずる。そのような遷移が試料中で起これば、磁場中の合成振動は受信コイルに電圧振動を引き起こし、この振動が増幅され検出される。図に示した装置では大きな磁石の磁場と送信器のラジオ周波数を固定し、大きな磁石の場に小さな可変場を連続的に加えていって共鳴を起こさせるようになっている。

(ここでテキストにはエタノールの低分解能NMRスペクトルと高分解能NMRスペクトルが示されている。)

・・・・・・・・・・。

送信器の振動場の振動数が、強い外部場のもとにある核磁石の歳差運動の自然の振動数に等しいときには、振動場からエネルギーが吸収される。いいかえるとマイクロ波の量子が吸収され核磁気量子数 mn が1単位増すのである。しかし振動場から連続吸収するには、核磁石がこのエネルギーを失って励起状態から基底状態へ帰り、またエネルギー吸収して他の量子飛躍に参加するというある有効な機構がなくてはならない。

ここで共鳴効果はエネルギーの正味の吸収を測るものであることを言っておく必要がある(すなわち低い状態から高い状態に移る際吸収するエネルギーと高い状態から低い状態に移る際放出するエネルギーとの差)。低い状態には多くの系があり(ボルツマン因子に従って)、正味のエネルギー吸収が起こるのである。

系が低い状態に戻るのは、スペクトルを放出することによるだけではなく、緩和過程とよばれるいろいろな無放射機構によっても起こる。このような緩和過程が存在しないと、下の状態にいる方が上の状態にいるより少ないような熱平衡を維持する方法がないから、核磁気共鳴は実際には不可能になるだろう。

緩和機構には次の2種類のものがある。その一つは外部場の方向の核磁化がその平衡値に達しようとする緩和であって、縦の緩和(longitudinal relaxiation)とよばれる。これは緩和速度が上の状態にある核の数の(平衡値からの)ずれの1乗に比例するから、1次反応式に従う。ここで速度定数の逆数は縦緩和時間 T1 とよばれる。この過程はまたスピン-格子緩和ともよばれ、配向した核のまわりの物体中のいろいろな変動する局所場によるものである。多くの機構の一例として、常磁性イオンが水に付着すると、イオンの不対電子の強い磁場のため陽子の緩和時間 T1 が非常に減少することが見出されている。

第2番目の緩和過程は横の緩和(transverse relaxation)( T2 )とよばれる。場の方向のまわりを歳差運動している核が互いに同一位相にあると、磁場の軸 Z に垂直な XY 面に磁気モーメントの正味の成分が残ることになる。したがってこの位相を破壊するような何らかの場があると、磁気モーメントの XY 成分の緩和を起こすことになろう。このような過程の1つはスピン-スピン緩和であって、スピンの高い状態の核がスピンを交換して隣の原子核へエネルギーを移すのである。

 

10月17日(日)

NMRの感度が気になって調べている。

化学と教育61巻6号(2013年)296-299:田代 充, NMRの基礎:観測できる原子核とできない原子核、観測しやすい原子核としにくい原子核

共鳴周波数が大きいほどNMR観測における測定感度が高い。実際の試料では天然存在比も感度に影響する。と書かれている。

相対感度は、炭素13を1.00とすると、プロトンは5.7x10^3となっている。フッ素19は、4.7x10^3、リン31は3.8x10^2、窒素14は、5.7である。

(感度は、共鳴周波数の3乗に比例する。)

 

 

 

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